変わるには
 
「つまりさ、今後どうすればいいのかって事だよ」
 自分でも何でこんな事を聞いているのか分からない。
 聞く相手を間違えている自信もある。
 ……にも関わらず、相談できる相手が他にいないのが悲しい。
「それは分かってるっつの。聞き返したのは、それを俺に聞く事なのか、て意味」
「一から説明するの嫌だし、説明した後に同情されて態度変えられるのはもっと嫌だし……。そりゃ、出来ればエミレィさんに相談したいけどさ、何処にいるかさっぱり分からないし……。お前、エミレィさんが何処に居るか知ってる?」
「知らない」
「即答しなくてもいいじゃないか」
「嘘つかれるよりはマシだろ? で、相談相手が俺な訳ね」
 そう言って、何故か笑うフォーマ。
 何で笑うんだよ……。どーせ友達いないですよーだ!
「そう睨むなって。別に馬鹿にした訳じゃないんだからさぁ……。
 それより、何で今更そんな事聞くんだ?」
「……どーせ後先考えずに生きてきましたよーだ」
「……そこまで言ってないだろ。ただ………その……………」
 必死に何か言い訳を探している様子。
 別に気にしてないんだけど。だって、その通りだから。
「考えるのが、怖かったんだ。考えたら、どう考えても……勝てるはず無いって。負けて、殺される、とか、もっと……酷い――」言いかけて、口を噤む。「……えっと、とにかく不安……でさ。勝って、生き残って、やりたい事とか考えててもさ、やれずに死んだら嫌だろ? 
 それにさ。例え、勝って、殺したとしてもさ……、何が残るのかなって。仇討ちとは言え人を殺す訳だし、そしたら……当然、嫌われ、て、軽蔑されて………」
 好いてもらえるとは、思わない。それで当然だと、思う。
 思うけど、それは嫌だから。物凄く悲しい事、だから。
「そう考えると、さ、どうやっても……ドロ沼で……さ。真っ暗で先が見えなくて………」
「……で、考えないようにしたのか」
 何も言わずに頷く。それを見たフォーマは、なるほど、と呟いた。
「今、まずする事は、あいつらの面倒見る事だろ?」
 何も言わずに頷く。
「……それだけじゃ、駄目なのか?」
「それじゃ、何も変わらない」
 目標が無いから。何処へ進めば良いのか分からないから。成長出来ない。
 いつまで経っても、嫌な自分のまま。
 それじゃ、
「意味が――無い」
 進まなきゃいけない。
 立ち止まってはいけない。
 そんな事をしていては、嫌われてしまうから。
「……お前ってさ、いつも必死だよな」
「……必死の何が悪い」
「必死になるのが必要な時は、確かにあるよ。そうじゃなきゃ、困る時もある。……でもさ、必死になり過ぎるのはどうかと思うぞ?
 人間っつーのはさ、必死に――必死に、頑張らないと変われないかもしれない。……でも、頑張り過ぎるとさ、逆にどうしようもなく行き詰ったりするんじゃないのか? いくら頑張ってもどうにも……どうする事も出来ない時だって、あるだろ?」
 何も言わずに頷く。
「それに、自分を変えてる位なら、変わらない方が良いと思う」
「……どういう意味だ?」
「『変える』っていうのはさ、良い奴を演じる訳で、本当の自分じゃないだろ? それならさ、それこそ意味が無いんじゃないかな。いくら表面を作ってもさ、根が悪いままじゃ、いつかボロが出るよな。……そんな事する位なら、変わらないままのが良いと、……俺は、思う」
「……変わらない……方、が?」
「あ、いや……、それだけじゃ駄目だけど」
 言っている事の意味がさっぱり分からないので首を傾げる。
「変わらなくても、変わろうとすればいい。無理に変える必要は無い、って事。 変われなくても、変わろうとしてるのなら、なら、いつかは変われるよな。時間が掛かってもさ、少しずつでもさ、変われるだろ? ……それでいいんじゃないか?」
 ま、変われるに越した事はないけどなー、とフォーマは笑った。
 何故か悔しかったから、そんなんだからお前はいつまで経っても変わらないんだよ、と笑い返してやった。
「悪い方へ変わるよりはずっとマシだよ」
 それもそうだ。
 悪くなってしまうくらいなら、
 変わる必要なんてない。

 まずは何処へ進むかを見定める。
 それが変わる為の第一歩。


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