ある所に、彼女はいました。
 彼女は気付くと、その森にいました。
 森の中は暗く、薄気味悪かったので、すぐに家へ帰ろうと思いました。
 ところが、家がどこにあるかが思い出せません。
 それどころか、自分の名前も思い出せません。
 困った彼女は、必死に思い出そうと考えましたが、森が気味悪いからでしょうか、上手く思い出せません。
 とりあえず森の外へでようと、彼女は重たい腰をあげて立ち上がりました。
 薄暗い森の中、彼女はどこへ進もうか迷いました。
 とりあえず明るい光の指す方へ進みました。



 しばらく歩くと、光の差し込む場所に出ました。
 空を覆うように隠していた木々は見当たりません。
 見上げると空は青く、とても澄んでいました。
 それでも家はどこにあるか思い出せません。
 それでも自分の名前がなんなのかも思い出せません。
 彼女は誰かに聞いてみようと思いました。
「もしもし、そこの大きい人」
 青い空から、赤色の鳥さんが現れました。
「こんな所でどうしたの?」
「それが良く分からないの」
 彼女は自分が何も思い出せないことを伝えてから聞きました。
「貴方は私を知ってる?」
 赤色の鳥さんは首を横に振りました。
「知らないよ。君なんて見たことがない」
 その言葉に彼女はがっかりしました。
「なら、誰が私のことを知っているかしら」
 すると、鳥さんが教えてくれました。
「森に住むウサギさんなら知っているかもしれない」



 彼女は赤色の鳥さんに案内を頼み、ウサギさんに会いに行きました。
「まぁ、びっくり。大きな人だこと」
 ウサギさんは赤色の瞳を丸くしました。
「鳥さんも一緒なのね。どうしたの、こんなところまで?」
「ウサギさん。貴方は私を知っていますか?」
「いいえ、知らないわ。貴方みたいな人、初めて見たもの」
 彼女はとてもがっかりしました。
「なら、誰が私のことを知っているかしら」
 すると、赤目のウサギさんが教えてくれました。
「物知りの長老に聞くといいわ」
「その人も私のことを知っているかしら?」
「長老は物知りなのよ。彼の知らないことなんてないんだから」
 それはすごい! と、彼女は喜びました。
「でも、長老は姿を見せてくれないの。暗闇の中でしか会ってくれないのよ。だから、誰も何者か知らないの」
 赤目のウサギさんは不思議よねと笑いました。



 彼女はウサギさんの案内で長老に会いました。
 暗い暗い洞窟の中で、黄金色に輝く大きな瞳が見えるだけ。
「長老さん。貴方は私を知っていますか?」
「知っているよ」
 長老はゆっくりと答えました。
「じゃあ、私の名前は何ですか?」
「それは教えられないな」
 彼女は腹が立ちました。
「何ですか、それは。知らないだけじゃないですか」
「知らなくはないよ。けれどこれは君の為なんだ」
「私の為にと思うのなら、教えて下さい」
「知らない方がいい。いいに決まっているんだ」
「そんな事ありません」
 彼女が反論するも、長老の耳には入っていかないようで、長老は一人ぼそぼそと呟きます。
「君は私と同じ。故に君の辿る道も良く分かる。私が姿を隠すように、君も姿を隠した方がいい。知らないのであれば知らない方がいい」
「自分のことを自分がわからないなんて、気持ち悪いです」
「なら、七色に輝く湖へ行くといい。そこなら君の本当の姿を見られるだろうから」



 彼女は一人で七色に輝く湖へ行きました。
「素敵……」
 あまりの素晴らしさにうっとりと眺めながら、彼女は湖を覗き込みました。
 そこにいたのは、真っ赤で、ゴツゴツして、がっしりとした、化物がいました。
「うわぁぁぁぁっ!」
 一度飛びのいてから、もう一度そぉっと覗きました。
 見えるのは真っ赤なゴツゴツとした皮膚、真っ赤に染まった鋭い牙、そして黄金色の大きな瞳。
 湖に映る姿は竜そのものでした。
「……違う………、私は、」
 竜。
 竜じゃない。
 竜だ。
 違う。
 人喰い竜だ!
 ……違う……。
 命を奪う化物だ!
 ……………違うッ!
「私は……私は………」

























 何なのだろう。

































 彼女は何も分からないまま、今日も自分を探しています。
 彼女は自分自身に 探求者 リチェルカ と名前をつけました。
 リチェルカは、今日も旅をします。
 本当の自分を見つけられると信じて。





















あとがき。
 一読ありがとうございます!
 リチェルカという小説を執筆しています。一度公開したのにすぐさま撤去しました。(すみません……)それに出てくる絵本の話。なので、童話っぽくしたのですが、上手く表現できません。長老辺りから小説っぽくなってます。あうち。
 ファイルの整理をしていたら、書きあがっていたのが見つかったのでお披露目。多分、一年位前の物かと。(気まずい沈黙)
 それにしても、画面は上手く表示されているのだろうか……。自分のモニタは普通サイズですが、電化製品店で最新のパソコンを見ると「デカッ!」と口から零れるくらいモニタサイズが大きいですよね。出来れば『何なのだろう』の部分はその文字だけで表示したいです。ネットだから出来る表現法。絵本だとそこだけで見開き一頁を想像しております。
 マジスト(と魔物)しかないサイトになりつつあるので、近いうちに別の物語を更新したいと思っています。……希望ですから!
 それでは、どうもありがとうございました。
    灰羽 えりか

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